感想山本 寛 × 岡田麿里 × 東 浩紀のオリジナルアニメ。
とにかく話題な作品ですね。個人的な話としては、東浩紀については10年以上前に
エヴァンゲリオンについての論文を雑誌に載せて以来のファンでした。
以来、ずっと彼の仕事は追い続けてきました。
またヤマカンもハルヒ以降の仕事は注目していました。さらに岡田磨里まで加わるとは。
こんな組み合わせが実現するなんて思いもしませんでした。
さてタイトルの
「フラクタル」には、
自然界のデザインにはどこか共通したものがある。
自己相似性という原理だ。これを数学的に表現しようというのがフラクタルだ。
つまり同じ式の繰り返しから自然界のデザイン生成をしようというものだ。という意味があるようです。
「自己相似性」がカギになりそう。
この「フラクタル」の意味と作品の接点がメインテーマになっていきそうです。
まず背景がきれいですね。なかなか淡いタッチで描かれる事で牧歌的な空気が演出されてますね。
22世紀と近未来のはずなのに、どこか郷愁を感じさせる絵作りになってます。
自然溢れる背景に癒されますね。みていて安心します。
風の谷のナウシカっぽいメーヴェも出てきましたね。女の子の落ち方といい、ヤマカンの宮崎駿リスペクトが感じられます。
(ヤマカンはインタビュー等で一番影響を受けたのは宮崎だと公言しています)
冒険活劇の作品のようですから、今後も宮崎リスペクトを感じさせる内容は出てきそうです。
ナウシカやラピュタっぽさは今後もつきまとう要素ではありそうです。

ジブリで少年が自転車に乗っているのというのは魔女の宅急便のトンボを思い出しますね。
トンボもクレインも海岸線を走っているのは偶然ではないでしょう。
自転車が海岸線を走るのは、絵になるのでしょうね。
空と海が一つの画面に収まるビジュアルは良いものです。

どっかで見たことがあるような3人組も出てきますね。
タイムボカンシリーズ→不思議の海のナディアの流れを連想させますね。
・菅改造内閣に江田五月氏が内定しました。フラクタルを見ながら、現代の政治動向までわかるのは良いですね。
1話はド直球で作品を作っていたのが感じられました。ド直球というのは、変な大仰であざとい芝居や萌えっぽい演出を入れずに
王道も王道に作っていますね。まるで
「世界名作劇場」みたいです。
ヤマカンにとっての王道がジブリの作風であり世界名作劇場なのでしょうね。
(世界名作劇場の方向性も宮崎駿や高畑勲が果たした影響も大きいのですが)
またもう一つ、京アニのムントも意識しているように感じられました。
ヤマカンは師匠である木上益治と(心の中で)勝負しているのかもしれません。
カメラの動かし方や構図の取り方にも不自然さを感じさせず、
fixなどのヤマカン好きな実写テイストのカメラワークを取り入れながらも
自然にごく自然に映し出そうと演出しています。
ヤマカンの生真面目さがきちんと表現されたフィルムだと思います。
一方で働かなくても基礎所得が得られるとか
アンドロイド的な両親っぽい存在がいるとかSF的なアイディアやガジェットは
ストーリー原案の東浩紀の影響が色濃く感じられますね。東浩紀は社会を語る中で
ベーシックインカム(最低限所得保障)の話をよくしていますから、
基礎所得という単語が出てきたときはまんますぎてビックリしました。
所々設定を見ると、今の日本をよく反映した設定のようにも見えます。
(それだけメッセージ性の強い作品ともいえそうですが)
こうした普遍的ともいえる作りは「ノイタミナ」だからこそ出来る作りなのでしょうね。ビックリするぐらい正統派冒険活劇モノである本作。
最初は驚くぐらい静かで、ヤマカン的なあざとい演出も無い展開でしたが
その事が逆に彼の本気を垣間見えたような気がしました。
フリュネの背骨が素晴らしい。ヤマカンは
「この作品が失敗したら引退する」という
ある種進退伺いを立てた作品でもありますが、
この事に関しては作品の話題づくりと捉えればで十分ではないでしょうか。
ヤマカンなりの作品の盛り上げ方なのでしょう。
これが本当なのかどうかはこのシリーズを見終わればわかるのですから。
脚本:岡田麿里 絵コンテ:山本寛 演出:山本寛 作画監督:田代雅子