「たまこラブストーリー」の変化と恋を描く物語の傑作性について 

「たまこラブストーリー」を鑑賞。

たまこともち蔵の初々しい恋の物語を丁寧な所作と芝居で描ききった快作。
こんな気持ちになれた青春映画を見たのは久しぶりだった。

併映された「南の島のデラちゃん」のファーストカットが往年の松竹映画のパロディだが、
これは本編の「たまこラブストーリー」は往年の邦画のように作りたいという決心だろう。

そんな邦画的である事を表明する本作は、省略と抽象性を上げること、
つまりキャラクターの心情や動機を、事細かに言葉等で説明せず、
極めて淡々と物語を紡いでいた事で、往年の邦画的であろうとした作品だと感じた。

特に本作で良かったのが、物語の展開のさせ方、組み立て方、構成だ。
そこでこの記事では本作の構成、本作に登場するアイテムについて、
重要な役割を担ったキャラクター「常磐みどり」の役割について語りながら、
「たまこラブストーリー」全体を包括できるように語ってみたい。

※ネタバレ有りです。

ファーストカットについて

まず、本作のファーストカットが、宇宙から見た地球だったのには驚いた。
商店街と学校という、宇宙から見た地球から見れば、
とてもミニマムな場所で展開する物語だからである。

ただたまこの変化は、パンフレットにも書かれた通りに
「宇宙の入口」に立ったような感覚なのだ。
その事を表現するために、わざわざ宇宙から見た地球のカットを入れたのだろう。

「たまこラブストーリー」は変化を描く物語だという事を
強烈に突きつけたファーストカットだったとわかるシーンだ。

光る構成の妙について

次に、物語の構成について語ってみたい。
構成で上手いと思ったのが、キャラクターを自然に二人きりにさせたり
展開が自然に二転三転していくところである。

例えば、たまこの祖父の福がもちを詰まらせて倒れ、病院に搬送された時に
もち蔵の両親が、もち蔵がたまこに告白した事で、お互い話せなくなったのを察してか
あんこと豆大と先に帰り、もち蔵とたまこを二人きりにしたところ。
たまこともち蔵を二人きりにする舞台の整え方として、上手い組み立て方をしたと感じた。

次に物語のクライマックスにあたる、たまこが連絡網で翌日の学級閉鎖の件を聞いて、
学級閉鎖の件をもち蔵には伝えず、翌日に学校で登校するであろうもち蔵を待とうとしたら、
みどりが登場して、たまこに「もち蔵は東京に向かった」と話す一連の流れ。

たまこは学級閉鎖の件を、もち蔵に話さずに翌日学校へ行けば
何も知らないもち蔵は登校し、二人きりでたまこはもち蔵と話せるとたまこは考えたはずだ。
鑑賞者側も、たまこがもち蔵へ学級閉鎖の件を連絡しないと決断し、
翌日たまこが学校にいるシーンを見た時に、たまこの考えに気づくと思う。

しかし学校に現れたのは、もち蔵ではなくみどり。みどりはもち蔵は東京に向かったと告げる。
ここで、同じ事を考えているだろうたまこと鑑賞者が裏切る展開が上手い。
通常の展開をひとつ裏切ったあとに、みどりを登場させて、さらにどんでん返しを図る。
物語が二転三転させていく展開の上手さに、舌を巻いた。

また本作は、たまこともち蔵とその友人関係の物語は基本的には学校を中心に進め、
一方でたまこともち蔵の家族と商店街の人々の物語は、商店街で描くことで、
学校と商店街の二つの舞台を軸に、「変化」というキーワードを、
学校=わかりやすい変化がある場所、商店街=わかりやすく見えないが変化もある場所、
という対比のさせ方で描いたのも上手かったと思う。

アイテムの使い方、関連のさせ方について

以上のような、物語の展開や繋げ方も上手かったが、
物語内の個々のアイテムが物語の進行によって関連づけされていくのが上手かった。

まずは、糸電話とバトンという個々の小道具が繋がっていく展開。
「たまこラブストーリ-」ではバトン部のたまこはバトンをリリースした後に拾えず、
もち蔵が投げる糸電話もほとんどキャッチできないことが描写される

これは、変化を気にしていなかった(バトン)たまこの心情の表れともいえるし、
もち蔵の想いを受け取れない(糸電話)という見方もできる。

ただみんなの進路を聞き、もち蔵の告白によって、変化があることに気づくたまこ。
そしてもち蔵の告白を受け止めてからは、バトンが取れるようになり、
新幹線乗り場で、もち蔵からの糸電話をキャッチできたたまこ。
たまこの変化、相手の気持ちを受け取れることを表現するアイテムとしての
バトンと糸電話が、それぞれの場面で効果を発揮する瞬間を見るのは楽しかった。

次に「もち」と「もち蔵」について。

たまこはもちの事が好きで、新しいもちの商品を考案しているが、
最初はもち嫌いであり、もち好きになったのは亡くなった母親の影響であった事が語られる。
たまこが考えるおっぱいもちやおしりもちというのは、母への思慕表現なのかもしれない。

ただ、たまこがもちを好きになったキッカケが、実はもち蔵であった事を思い出す。
つまり元々意識していなかったが「もち」=「もち好き」=「もち蔵好き」だったのだ。
それがわかってから、たまこはもち蔵の事が最初から好きだったと自覚し
もち蔵への想いに応えようと考えを改める。
もちというアイテムと、もち蔵という名前が、関連付けられていく展開もまた面白かった。

たまこともち蔵を俯瞰し、後押しする常盤みどりの存在

本作は、たまこともち蔵の両想いな二人が、お互い声に出していえない気持ちを
お互い声に出して告白することで、二人の関係の変化、自身の変化を描いた作品だ。

そんな二人の関係を俯瞰しながら見て、時には苛立ち、時には後押ししたのが常盤みどりだ。

TVシリーズ2話で、みどりはたまこに対し、友達以上に想う感情表現を見せ
もち蔵のたまこへの想いに気づき、煮え切らない態度に苛立つ。
そして「たまこラブストーリー」では、みどりがもち蔵にたまこへの想いを
打ち明けることを後押しして、たまこに「今日もち蔵が話がある」事を伝えることで、
もち蔵はたまこに告白できた。みどりは重要な役割を果たしている。

そんなみどりはもち蔵が告白した事に対して、告白できないと思っていたので評価している。

一方でたまこに対しては、これまたもち蔵に気持ちを伝えられないので、
たまこに「もち蔵が今日転校する」という嘘をついてまで後押しをする。

おそらくみどりは、二人の関係の変化/発展を願っていた。
それ以上に二人の気持ちも察し、二人の関係の決着を願っていた。
それは、みどり自身がたまこやもち蔵に対する感情に決着をつけたい面もあったはずだ。

つまり、みどりもたまこともち蔵を後押しして、自身を変化させたかった。
だからたまこに嘘をつき、たまこが走ってもち蔵の元へ向かったのを見て、
二人の関係は変化するとわかったみどりは、かんなとともに走る。
このシーンを見た時に、みどりの何かが吹っ切れたと私は感じた。

序盤で進路を聞かれた時に、漠然と進学と答えたみどりだったが、
たまこともち蔵の関係を、誰よりも深く理解してフォロー役に回り
自分の気持ちを吹っ切った・変化させた点で、影の主役ともいえる存在感を発揮したと思う。

こうした作品内で、作品・物語をわかっているキャラクターが存在し、
物語の問題解決を後押しするのは、私個人的にはとても好きだ。

まとめ

想像以上に、しっとりとした物語の語り口とストイックな仕上がり。
ほぼコメディ無しでこんなに真面目に作ってしまったのかと驚いた。

そして、たまこを筆頭にみどり、かんな、史織、あんこを含めて
どの女の子達の仕草・動き・芝居には個性/違いがあり、
それぞれがそれぞれに可愛いのが表現できていたのが上手かった。
この辺りの作画面は京都アニメーションの強みが十分に出たと思う。

山田尚子さん・堀口悠紀子さん、吉田玲子さんが3人が揃った美少女アニメは強いと再確認。
山田さんの主導によるものであろう、キャラクターの会話劇の切り返し方、
決して飽きさせない(間が持つ)カメラの置き方、ダイナミックな走らせ方。
行き届いた演出による画面の面白さもにじみ出ていて、見ていて楽しかった。

何より、二人の淡い恋による変化を丁寧に描く展開と物語に好感が持てた青春映画。
恋と変化の変という文字は、漢字の部首に共通点がある意味で、
恋とは変わることでもあることもわかったし、
たまこまーけっとという作品が好きなことも再確認できた作品だった。

最後の新幹線の辺りのシーンは、うるっとしながら見ていた。

機会があれば、もう一度劇場で見たい作品だ。
 
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[ 2014/04/27 15:31 ] たまこまーけっと | TB(7) | CM(1)
初めてコメントさせていただきます。
正直私はこの映画を見るまで、たまこまーけっとという作品があまり好きではありませんでした。しかしこの『たまこラブストーリー』を見て、考えが180度変わりました。
物語の構成・演出が本当に素晴らしい。劇場で見て良かったと思います。おはぎさんと同じく、このような気持ちになれた作品は久しぶりでした。
スタッフの皆さん、声優の皆さん、素敵な作品をありがとうございました。
[ 2014/04/28 17:37 ] [ 編集 ]
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 京都アニメーション原作・制作。2013年放送のアニメ「たまこまーけっと」の後日談を、テレビシリーズと同じく山田尚子(監督)×吉田玲子(脚本)×堀口悠紀子(キャラクターデザイン・総作画監督)の「けいおん!」トリオで映画化。 高校卒業を間近に控えたある日、
GW明けに観た「たまこラブストーリー」の感想です。 鑑賞直後の雑感的なもの(ネタバレ無し)は既に書きましたのでそちらを読んで頂くとして、前置きは抜きで内容について早速…(^^) (以下ネタバレ有りになります。ご注意下さい)
[2014/05/27 21:16] たらさいと
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[2014/04/29 13:10] 気の向くままに
 「たまこラブストーリー」を川崎チネチッタで視聴。初回が普段見ているアニメ映画に比べると遅めの11:30でしたが、まあおかげで部屋の掃除していく時間が取れて良かった。追記部分はネタバレなので先に書いておくと、「たまこまーけっと」を全話見た人なら、評価の高低に関わらず視聴してみる価値があるのではないかと思います。
[2014/04/27 21:18] Wisp-Blog
たまこラブストーリーを観てきました。 MOVIX京都の舞台挨拶のチケットは上映後の回は満席でしたが、上映前の回が運良く空いていたので見に行く4日ほど前に買ってしまいました^^ もち蔵コスした田丸さんが格好良かったし、MCのデラちゃんに糸電話使ったボケを振られて紙コップの部分を耳に見立ててミ○キーの物真似してたところは面白かったw まだ公開2日目ということで一周目の入場者プレ...
[2014/04/27 21:12] MAGI☆の日記