「魔法科高校の劣等生」の26話(最終話)を見て感じたのは,
司波達也というキャラクターにつきまとう悲劇性だった。

このことを感じたのは、美雪と学校の仲間達が
達也の分解と再成の能力について話すシーンだった。
「その需要は計り知れない。その能力を使えば何千何万という人の命を救うことができる」お兄様、司波達也が圧倒的強さで敵を屠ろうとも
その一方で、仲間達ですら達也が手に入れた能力の代償には気づかない。

※達也の能力について話す美雪の顔はとても悲しそうだ。
誰も、達也の能力に驚嘆しながらも
美雪が教えるまで再成の為に生ずる150倍の苦痛の理解には至らなかったし、
そんな苦痛を支払いながらも、まだ他人の為に戦う達也は悲劇的だ。
結局、達也を理解しているのは美雪だけであり
この仲間達と深雪の達也への理解度の差の隔たりこそ悲劇だと感じた。
そんな深雪自身も、四葉家次期当主候補という現状から
ガーディアンという役として兄を縛る存在であることも知っている。

例えば、今回の四葉家当主・四葉真夜と美雪の話し合いをも、
両者の関係からは、一種の緊張状態が続いているように見えた。
二人にとって四葉家に置かれる状況がわかる会話だった。
深雪の存在もまた達也を縛る悲劇を背負わしている。
ただ、達也は深雪の存在を枷だと全く思っていないだろうが。

※達也の圧倒的強さを証明する、核爆発級の破壊描写
そんな、達也の強さと裏腹に潜む悲劇を描いた「魔法科高校の劣等生」は
妹以外への感情を失った達也の気持ちに符合するかのように
映像の語り口も徹底してクール・非感情的に描かれる。
達也視点からは妹と絡むシーン以外に感情的な盛り上がり方は殆ど無く、
他のキャラクターも、感情的に盛り上がるシーンでも、
達也の重力に引っ張られるかのように、感情的ではあるがクールに描かれる。
この画作りさには、ストイック的な匂いすら漂う。
そんな非感情的な達也に対し、達也への愛情を隠さずに振舞う深雪は
達也とは対極に位置する感情を強く出すキャラクター。
つまり達也の強さとその代償に潜む悲劇性を見守るのが深雪であると
最後のシーンで感じることができたし、
達也と深雪の関係が二人にとって全てであり、そこで生じる悲劇性を帯びる
物語構造を見ていくのが「魔法科高校の劣等生」の醍醐味であると感じた。

「さすがお兄様ですわ」もただ、兄を賞賛する態度ではなく
兄の苦しみ・裏表を全て知っているからこそ投げかけられる救済の言葉なのかもしれない。
達也と深雪、二人のこれからを勝ち取る物語はまだまだ続く。
- 関連記事
-
読んでないからと、調べもしない怠惰な態度は全く違うと存じます
中国(作中は大東亜連合)による四葉家当主候補(妹)の誘拐及び非道な人体実験の結果、世界を恨んだ姉の子が達也であり、世界を滅ぼしかねない達也に杭(深雪、調整体)を打ち込んだのが四葉です