「Gのレコンギスタ」11話を視聴。
今回、キャピタル・アメリアといった各勢力がある中で
各勢力の内々では個々の思惑が働くことで、
どの勢力も一枚岩ではないことが描かれていた。
ではこの各勢力が一枚岩で描かれない意味とは何か。
この事を戦争がなぜ起こるのかという視点も含めながら考えてみたい。
首脳陣の考えが違うアメリア

まず、アメリアの首脳陣の考えの相違についてみてみる。
今回は、クリムの父ズッキーニ大統領が主催する出陣式に
パラシュートで降りてやってくるアイーダの父スルガン総監が
大統領のやり方に因縁をつける。
息子のクリムに戦艦サラマンドラを出陣させ
キャピタル勢力と戦う事を宣言するズッキーニ大統領。
対して法皇を人質に取り、早期収束を図ろうとするスルガン総監。
スルガン総監はこの事を聞いていないために、統帥権の侵害だと感じている。
以下の会話を見てみよう。
ズッキーニ「キャピタルタワーを足場にして、ゴンドワンを叩くというのは貴公の立てた作戦である」スルガン「そうではあるのでしょうが、なぜサラマンドラをなぜこの時期に出動させるのです。それも私の許可もなく」ズッキーニ「キャピタル・アーミィがタワーを占拠したというから大統領権限で発信させたのがなぜ悪いのか」スルガン「今は休止にさせて頂きたい」ズッキーニ「宇宙艦隊では後方支援をしろと号令を出してしまったのだ。今更取り消せる問題ではない」スルガン「今更取り消せない。軍令に従う義務が自分にはあります」ズッキーニ「アメリア帝国の威信の元、キャピタルタワーの独占を阻止して、世界を解放してみせろ」スルガン「はっ」スルガン総監が立てた最初の作戦通りに動くズッキーニ大統領。
キャピタルに潜り込み、作戦を変える必要性を感じたスルガン総監。
目的は同じところもあるが、両者の考えには、大きな隔たりが有る。
つまりここでアメリアという国家組織が一枚岩ではなく。
それぞれの思惑で勝手に動いてしまっている様子が描かれる。
牽制し合うキャピタル・アーミィの二人の首脳

一方で、キャピタルの中でも好戦的な勢力であるキャピタル・アーミィ。
この組織の中心人物は、創設者であるクンパ・ルシータ大佐と
現場の指揮を執るジュガン・マインストロン司令。
この二人も会話を聞いている限り、一枚岩ではなく
お互いが牽制し合っているようにもみえる。
以下、今回の戦いが終わった後の会話を見てみよう。
ジュガン「マスクの部隊はまだチームワークができていないようですな」クンパ「いきなり両面作戦を押し付けたのは祟りましたな」ジュガン「祟りましたか」クンパ「ガランデンにはザンクトポルトへ上がれと命令を出しておきました」ジュガン「宇宙からの驚異から法皇を守るためですな」クンパ「無論そうです」この会話で、マスク部隊の管轄はクンパ大佐にあることがわかるが、
クンパ大佐はジュガン司令の作戦内容に釘を刺し、
一方のジュガン司令はクンパ大佐にマスク部隊の練度の低さに釘を刺し、
お互いに牽制し合っているようにも見える。
この二人も、同じ勢力に属しているとはいえ一枚岩ではないように描かれる。
特にクンパ大佐は9話で地球人自体を批判する発言をしている面も含め、
その真意は未だに測りかねる部分が強い。
この創設者クンパ大佐と現場指揮官ジュガン司令の関係は、
「機動戦士Zガンダム」のジャミトフ准将とバスク大佐に近いのかもしれない。

ティターンズの創設者であるジャミトフ、そして現場指揮官のバスク大佐。
特に「機動戦士Zガンダム 劇場版」では、ジャミトフがバスクの自分の意向を
無視した行動を次々に起こし、組織が一枚岩ではないことが描かれていた。
その為にジャミトフはバスクの対抗馬としてシロッコを抜擢し、
その結果、ティターンズがさらに分裂し崩壊する結果が描かれた。
まだクンパ大佐とジュガン司令が対立を起こしているわけではないが、
お互いに牽制し合っている点で、この二人がどう動いていくのかも見ものだ。
各国の首脳は二人という傾向

そしてキャピタルの勢力には、法皇とウィルミット長官がいる。
こう見ると、各勢力には二人の首脳で成り立っていることがわかってくる。
キャピタル・アーミィ=クンパ・ルシータ大佐・ジュガン司令
キャピタル=法皇・ウィルミット長官
アメリア=ズッキーニ大統領・スルガン総監
そして直接的には描かれていないが、
ウィルミット長官と法皇の考え方もまた違うのだろう。
こう見ると、各勢力が交戦的な派閥と穏健的な派閥に
分かれていく様子が描かれているようにみえる。
交戦派の盛り上がる現場
そんな各国が二つの派閥に分かれていく中で、
その好戦的な派閥の現場では、士気旺盛な兵士の姿、
特にエースパイロットが各兵士を鼓舞する姿が描かれる。

※連敗の汚名を注ぐと宣言し、マスク!マスク!と連呼されるマスク大尉

※手柄を立てミック・ジャックの姫になれと兵士を鼓舞する天才クリム
キャピタルの交戦派アーミィの下で、兵士を鼓舞するマスク。
アメリアの交戦派ズッキーニ大統領の下で、兵士を鼓舞するクリム。
交戦派の兵士が戦いたがっている姿が描かれる。
上官が戦争をしたければ、下士官も戦争をしたい姿が描かれる。
こうした姿をみると戦争がより激化しているように感じてしまう。
そんな交戦派同士が戦い始める事で、
戦争を起こしたくない穏健派も戦いに向かわざるをえない
という構図を描いたのが今回の11話だったのではないだろうか。
戦争は各勢力が混沌化する中で激化する
一旦、各勢力をまとめてみよう。
アメリア交戦派:ズッキーニ大統領、クリム、ミック
アメリア穏健派:スルガン総監、ドニエル艦長、アイーダ、ベルリ(ノレド・ラライア)
キャピタル:法皇、ウィルミット長官
キャピタル・アーミィ:クンパ大佐、ジュガン司令、マスク、バララ、マニィ
キャピタル・ガード:ケルベス今回11話は各勢力が一枚岩ではない状況から、
各勢力の交戦派同士が戦いあっていくことで、
より戦争が激化していく様子が描かれていたと思う。
それはサブタイトルの「突入!宇宙戦争」という
次に「突入」しているのだという意味からでもわかる。
今までの「Gのレコンギスタ」では、戦争が起こっている、激化する様子を
各勢力のモビルスーツの発展、軍事力の増大によって描いていた。
そして今回は各勢力の派閥が明確になり、特にアメリアの首脳の考えが食い違いもあり
混沌化する政情の中で、戦争の舞台は宇宙にまで激化する様子が描かれた。
こう考えると、戦争が起こるのは一枚岩な国家勢力が起こすものというより
各勢力が混沌化した情勢を迎えて起きてしまうのかもしれないのではないだろうか。
ただ富野監督がハンナ・アーレントの「全体主義」を新作で描くと明言している以上、
最終的には、いずれかの組織が一つの考えに収束して戦争を起こすという
描き方をするのかもしれないが、それは次回以降の展開次第。
まとめ
「Gのレコンギスタ」は戦争がどう起こるのかを丁寧に描いている作品だと思う。
そんな中で、ベルリがどう考えてどう立ち向かうのかを描く作品でもあるのだろう。
今回は斧谷稔こと富野監督と寺岡巌さんの連名コンテ。
寺岡さんは戦闘シーンを中心にやっていたと思う。
そして前回の荒木哲郎さんのコンテと比較すると、
10話の荒木哲郎さんコンテは画面の情報量を整理して見せているのに対し
富野コンテは画面に情報をできるだけ巡らせて
引っかかりと違和感をとにかく絨毯爆撃のように与えてくる。
富野監督は視聴者に引っかかってほしい思いが伝わる。
そういう意味で「Gのレコンギスタ」は伝えることを大事にしている作品だと思った。
おまけ

高笑いする二人。
どちらも自信満々な態度を取るこの二人の親子は似たもの同士だとわかる笑い方だった。
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