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「Gのレコンギスタ」―なぜ戦争は起こるのか。タナトスとエロスの関係から 

はじめに

「Gのレコンギスタ」23話を視聴。

地球から月、月から金星までのベルリとアイーダの旅行も終了。
旅を経た二人の意識の変化が感じられる内容だった。
そして玉川慎吾さんのエネルギッシュなキャラ作画が光り、
とにかくキャラの芝居が細かくそしてパワフルだった。

「Gレコ」は数々の題材を扱ってきた。
文明が進みすぎた為に滅亡し再生した世界の
「技術」と「エネルギー」と「宗教」の有り様。
宇宙で人が暮らす時代の「人の意識」と「男女の関係」。
そんな数ある題材の中でも今回は
「人はなぜ戦争を起こすのか」という切り口を強く描写していた。

クライマックスにもってくるのは、やはり「戦争」だった。

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今までの「Gレコ」を踏まえるなら
一つの勢力・同じ組織、同じ星の人間同士でも
様々な考えがあることで対立し、引いては戦争になる。
その中には戦争状態を利用し、自分のプライドやサクセスを掴みたい人間もいる。
またはハンナ・アーレントの「独自に判断できる人は少ない」発言から、
状況に流されるままに戦争を始めてしまってしまう人もいる。
人がいるから戦争が起こるのだ。

呼び起こされる兵士の攻撃性

そんな中で今回は、今まで以上に深く
「なぜ戦争が起こるのか」というメカニズムを
ベルリと同行した金星の一兵士の行動を通して描いていた。

この兵士の行動を攻撃性や破壊衝動を意味する
タナトスという言葉から考えていきたい。

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※金星の兵士が乗る機体

金星の兵士は編隊もうまくできないぐらいの人だった。
そんな中で、トワサンガのロックパイが乗るガイドラッシュの攻撃に
キャピタル・アーミィのベッカーが乗るウーシアが撃破される。

金星の兵士はウーシアが撃破される光を見て冷静さを失い
ガイドラッシュに突撃して、無力な攻撃を試みるもあえなく撃沈する。
兵士の顔を一切見せず、声だけで煽っていく演出がエグい。

戦争を知らずまったく慣れていない金星の兵士が
実際に戦争に加わって呼び起こされた怯えや恐れの感情が
兵士の中にある攻撃性・破壊衝動を大きく呼び起こす。
そして兵士の死をキッカケにベルリもまた戦闘に参加する事になり
ロックパイを殺害せざるを得なかった。

攻撃性は新たな破壊や攻撃を生み、それが積み重なって戦争は起こる。
戦争に慣れていない・感情がコントロールできていない兵士だからゆえに
起こった悲劇ともいえるだろう。

もしかするとピアニ・カルータことクンパ大佐が戦いの必要性を感じたのも
こうした兵士のような存在を金星で見てきたのもあるのかもしれない。

人は破壊衝動を呼び起こされて戦争に向かうとき、どうすれば良いのだろうか。

エロスと戦場

一方でタナトスとは対極にあるエロスも
ロックパイとマッシュナー、あるいはクリムとミック。
二組の関係で描かれている。

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ロックパイの出撃に対して励ますマッシュナー。
ロックパイもマッシュナーを立てる言葉を使う。
二人の仲むずましい関係性がはっきり見える描写だ。

この後に、クノッソス艦長の前で「気持ちよかった」と話すマッシュナー。
ここまで直接的にロックパイとの関係を告白する程に
マッシュナーはロックパイに惚れているのだろう。

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また作戦打ち合わせ時に、ミックに「寝坊」と言われたクリム。
ここでも二人がそうした関係にある事を直接的に言っている。
それを聞いた艦長は顔を赤くしているのが特徴的だ。

この二組の関係から見えるのは、
戦争中だからこそ、破壊衝動も強くなり
生への執着も強く働くという意味なのかもしれない。
戦争中でも男と女がいればセックスする。

この男女の関係こそ破壊衝動を呼び起こし戦いを導くトリガーともなる。
今回はマッシュナーを抱きエロスに溢れたロックパイが
戦場でベッカーと金星人を殺し、最後はベルリによって死んだ。

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マッシュナーもエロスに溺れ、ロックパイが死ぬ可能性を
実際にロックパイが死ぬまで考えることができなかった。
可愛がっていた男を戦場に送ってしまった女の悲劇である。
そんなマッシュナーが、ロックパイの死をニュータイプのように感じられたのは
戦争中にあって感受性が強くなっていった結果なのかもしれない。

ロックパイの死は、エロスの裏にはタナトスがあることをはっきりわからせてくれる。

ベルリの慢心

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ベルリが寒気を覚えたのは、ロックパイを殺したからか。
ロックパイの死によるマッシュナーの負の感情を
ベルリが直接感じ取ってしまったからか。

そんなベルリも慣れていない金星の兵士に
「あの人たち、戦争が怖いってわかってないよな」と言いながらも
ベルリ自身が死ぬ可能性を考えていなかった。

ラライアがベルリに「ロックパイと同じ」と諭した時に
「Gセルフでだぞ。パーフェクトバックパックがあるんだろ」と言い返す点で
ベルリは自分が死ぬとは思っていないのがわかる。
それは今までの描写を見ても、特に序盤のベルリは天才肌であるがゆえに
戦争・戦闘をピンチになってもGセルフの性能も相まって乗り越えてきた。
その経験がベルリの慢心を強くしてきたのだと思う。
今回、自分が死ぬことの可能性を覚えたベルリはより強くなるだろう。

まとめ

生があるから死がある。
死があるから生がある。

タナトスとエロスは相互作用することで、新たな命が芽生える。

「Gのレコンギスタ」で23話で描かれた、セックス(生)と戦争(死)を見ると、
戦争が起こるのは人間が本来持つ攻撃性や生への執着といった
死や生の衝動が原因であるという見方もできる。
それゆえに戦争を完全に止めるのも難しい。
人間にとって戦争はどうしても起こしてしまうものかもしれない。

いよいよ佳境を感じさせる「Gのレコンギスタ」。
次回予告を見る限りバララもグシオン総監も死ぬ可能性を感じさせる。
最終話までにどれぐらいのキャラが生き残れるのか。もしくは死ぬのか。
人の死をクライマックスに一気に見せてくる
富野由悠季監督の真骨頂といえる展開になりそうだ。
  
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[ 2015/03/07 09:35 ] Gのレコンギスタ | TB(3) | CM(0)
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