時をかける少女の細田守の最新作。
少しでも見る前のネタバレは避けたかったので、事前情報は調べないで見る事にした。
おおまかな感想をいえば、「ぼくらのウォーゲーム」のアップグレード版であり
そこに大家族的価値観やティーン達の淡い心情を詰め込み、
貞本の絵も含めて、非常に間口が広い作品に仕上がっていると思う。
本当に手堅く仕上がり、満足させてくれた点をまず評価したい。
何より話にやられてしまった。
普通に大家族が集まって、夏を過ごすと言う光景は私にとっては珍しくは無くて
むしろノスタルジックに浸らせてくれるものだったので
そうした何十人で食事をするシーンは感慨深かった。
また、彼らの住んでいる田舎もやはりどことなくリアリティを感じさせる。
そして本作の最大の見所はおばあちゃんだ。
事件が表面化した時に、冷静に対処し、各関係者に電話入れるところは
電話を入れるだけなのに、カタルシスを感じさせる所は凄かった。
あの大家族にとっておばあちゃんは家長であり、その死が余りにも大きかったが
ラブマシーンとの対決をおばあちゃんの敵討ちと位置づけて
最後はおばあちゃんの好きな花札で勝負をつける展開は見事だったなぁ。
また家族が団結するのもおばあちゃんの遺言だったのも凄い。
(この遺言内容も本当にツボだったなぁ)
正直、本作ではあのおばあちゃんが一番好きだ。
最近ではヱヴァもそうだが、やっとCGの表現が手描きとの融和性を獲得し
本当の意味で見応えある映像表現が拡張される印象がある。
要はCGは省力化の為に行われるのではなく、CGでしか表現できない事の為に
使われるようになってきた。本作も見応えあるCGがネット世界で繰り広げられ
一方で手描き作画が田舎描写との対比で描かれたのは流石だった。
唯一の不満点は上にも書いたが、プロットが「ぼくらのウォーゲーム」から
拝借してる部分が多く、濃いファンだとある程度、話の予想が出来てしまった所だろう。
話を感動的に見せるスキルは縦横無尽だが、話の引き出しはそこまで
広くない印象を受けてしまったが、これは見逃してもよいかなと思った。
細田守監督は抜群に上手い演出家であり、完成度に関しては群を抜いている。
そして本当に着実に素晴らしいキャリアを築いている印象だ。
おそらくは今後も大作映画の仕事がメインだろうが、次の仕事をモノにしていってほしい。
こうした結果を築いていけば、ジブリ程ではないが一般人にも訴求力を持てる作品が
生まれるかもしれない。アニメの面白さを一般人にも届けられる力を持つ
数少ない可能性を持つ方になるかもしれない事を期待したい。
素直に、ヒットになってほしいなぁと思う。
そしてこういうアニメが年に何本か出てくるぐらいの成熟は欲しい。
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ジブリ作品よりも、こういう映画こそ大ヒットすべきだと思うほど、素晴らしい映画でしたよ。