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新房昭之への私の想い 

あるブログさんにお邪魔して新房×シャフトについてコメントしたら
無性に新房について書きたくなってしまった。

新房について分類するとすれば
2005年のぱにぽに以降、シャフト専属で仕事を続けるシャフト以降
リリカルなのはとコゼットの肖像を手がけた2004年までのシャフト以前と分けられるだろう。

最近のファンはシャフト以降好きな方が多いと思うが
私はシャフト以前の新房が好きだ
というのは、単純に私はシャフト作品以前の作風に惹かれてファンになったからだ。

むしろ最近の新房の監督作品は名義貸しみたいな側面が強い。
これだと言い方が悪いので、例えて言うなら野球の監督に近いかな。

野球の監督(新房)はチーム内(シャフト)の選手(メインスタッフ)の采配(各役職の配置)
と指導(アドバイス・監修)が主な役割で本人が直接野球(原画や演出)をするわけではない。
しかしこの監督(新房)の役割を担えるのはチーム(シャフト)には彼しかいないのだ。

ただ残念なのは、私が好きだったのは監督になる前の彼(シャフト以前)なのだ。
選手でもあり監督でもあった、ソウルテイカーやなのはが好きなのだ。
またもっと純粋に選手だった幽遊白書の演出時代や
OPを担当したタツノコファイトやセイバーマリオネット等は相当に好きだ。

おそらく、シャフト以前の方が新房の個性が出ていると直感で感じる。
例えば化物語は、正直どこまでが新房でどこまでが尾石達也の作風なのか
正直わからない。またシャフトで共有できる演出部分も練り上げてきた側面もあるので
一概に一人の人間に集約させる見方は当てはまらないのかもしれない。

では新房の何が好きなのか。それはカッコイイ映像を演出できるから。
極端すぎるパースや陰影、ステンドグラスや十字架といったオブジェの記号的羅列。
視覚的快楽を得られる映像美、そして映像の高揚感や緊張感を表現できる演出家なのだ。
コゼットの肖像のゴシックホラーな作風は氏の演出の最たるものであろう。

演出家としては非常にレベルが高い方だと思う。
しかし特にシャフト以前では大きな弱点も抱えていた印象がある。
それは、新房は物語・話作りにあんまし興味無いのではという点だ。
提示されたどんな話に対しても、映像を膨らませる才能は凄いのだが
大本の話を面白く膨らませる点をあんまり考えない人という印象がある。
逆にいえば、話を犠牲にして映像美の高い演出をしていた側面もある。

新房がシャフト以前では知名度が高くなかったのは
作品があんまし成功していなかった側面もある。
それは物語の力が弱い作品が多かったからだと思う。
その反省からかシャフト以降は話にも力を入れるようになっている。

もう一つ、新房がシャフト以前と以降で大きくスタイルを変えたのは
新房が本気を出すと大変になる事を自ら知ったというのも大きいかもしれない。
例えば、新房が監督したソウルテイカー。特に絵コンテを担当した1話の出来は破格だった。
ただ1話の制作に異常に力を入れすぎ、スケジュールは破綻し
後半は目に見えるようにクオリティが落ちた。

こうした経緯もあってか最近は力は入れながらも、ある程度余力を残した
演出をやっている印象を受ける。それでも本人が久しぶりに絵コンテを担当した
ひだまりスケッチ365の12話は格別に演出力が違い面白かった。

だんだんまとまらなくなってきたので最後に。

新房は純粋な演出家だ。話を直接考えるよりかは、与えられた話を
どう調理するかという点においては相当に優秀な方だと思う。
不運だったのはシャフト以前は恵まれた題材に乏しかった事かも。
本当に話に力のある原作をはやく手掛けていればという気持ちは残っている。
 
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[ 2009/09/16 21:07 ] 化物語 | TB(0) | CM(7)
こんばんは。反応せざるを得ないので早速コメントさせていただきます。
たぶん世代的な問題もあって、自分はシャフト以前の新房監督をあまり知りません。なのでこういう考察は読んでいてとても勉強になります。昔の作品は見たいんですが、レンタル屋に置いてないのと、ネットの動画に頼るのが癪なので、なかなか手が出せません。

野球チームの例えはとても分かりやすいですね。最初は私は新房ファンを名乗っていましたが、次第に監督の役割の構造が分かって来てからは、シャフトファンを自称するようになりました。むしろお前は大沼心のファンだろう、と思ったのでw しかし、「シャフトで共有できる演出部分も練り上げてきた側面もある」というのは全面的に同意で、誰がどうっていう話はむつかしいかもしれませんね。

また「物語・話作りにあんまし興味無いのでは」というご意見にも大いに納得です。ただこれは近年のアニメの傾向でもありますし、新房監督が2000年代に入ってから売れたというのは、話を凝らなくても作品がヒットしやすい時代背景もあったのかな、と思います。今後、視聴者がアニメによりストーリー性を求めることになった場合に、それを受けてどういう作品作りを見せてくれるのか、期待と不安があります。

話が大きく脱線しますが、ohagiさんは「ウテナ」のファンでもいらっしゃると読んだ記憶があるのですが、自分は今のシャフト演出が、「ウテナ」の演出技法と通ずる部分がけっこうあるのではと思っていて、いつか考察しようと機会を伺っているのですが、なかなか考えがまとまりませんw いつか書く機会があれば、ぜひohagiさんのご意見を伺わせて頂きたいと思っているので、よろしくお願いします^^

ではでは、失礼します。
[ 2009/09/17 00:45 ] [ 編集 ]
シャフト以前の新房作品でレンタルで容易に見られるのは
「リリカルなのは」と「ソウルテイカー」ぐらいでしょうか。
この二つは新房を解き明かすのに必須な作品だと思います。
そして、本当に見てほしい「コゼットの肖像」はレンタルされていないです。
たまたま後輩が持っていたので見ましたが、これはがんばって見てほしいです。

今のシャフトの演出を作り上げたのは新房・大沼・尾石の3人でしょうね。
でもこれを具体的に解き明かすのは非常に難しいです。
重要なのは、この3人以外にもある程度汎用できるスタイルを作っている所です。

>話を凝らなくても作品がヒットしやすい時代背景

萌えの事も射程に入れての発言でしょうが、実は今も昔も状況は変わっていない気がします。
話の良し悪しに関係なく売れる作品はありましたし、話が良くても売れない作品もあった。
新房が受けたのは自分の作風にあった原作を見つける能力を「ぱにぽに」でやっと
手に入れたからだと思います。シャフト以前の新房は売れ線の原作を手がける機会は
少なかったし、監督にも話作りの能力が求められるオリジナルにも手を出していたり
決して彼にとって有利な環境ではなかったと思います。
でもその中で、極度の映像美を追求していた点が好きだったりするのです。

>視聴者がアニメによりストーリー性を求めることになった場合に、それを受けてどういう作品作りを見せてくれるのか

新房ならその時代に見合った作品を提供できると思います。
強いて言うなら、シリーズ構成は誰と組むかで大きく変わると思います。

>今のシャフト演出が、「ウテナ」の演出技法と通ずる部分

通ずるといわれると通ずる部分もあると言えます。
いかにも記号的なオブジェの羅列で視覚的に意図を感じさせる演出は確かに似てます。
ただウテナは視覚的演出と話のテーマやメッセージが表裏一体な作品だと思います。
一方のシャフトは視覚的部分をさらに強調し、逆にメッセージ性は後退している印象です。
これはCGの導入以前のウテナと、導入後のシャフト作品という時代の差でしょう。
シャフトの色彩感覚やオブジェの配列、実写の挿入はCG前提の演出手法ですし。

あとカット割りに関しては、シャフト作品はカットを割りすぎて
キャラの感情の流れをも割ってしまい、話に入り込みにくい部分があります。
ウテナはその辺りは逆に自然なキャラの感情に沿ってカット割りするので
キャラクターに自然に感情移入しやすい作りでもあります。
その辺りの感情の流れは新房より大沼が関わったefの方がウテナに近い部分かなと。

共通しているのはウテナもシャフトも「演出主導型」の作品という所でしょうね。
作画よりも演出の方が目立っている点では似ていますね。
[ 2009/09/17 21:01 ] [ 編集 ]
新房氏に近い作風の監督は
真下耕一(しかも20年ぐらい前の)だと思っています。
[ 2009/09/17 21:17 ] [ 編集 ]
ニコニコ大百科の「新房昭之」からのリンク(実質トラックバックなんでしょうが)で訪問させていただきました。
ひょんなことで、予備知識もなく「黄色いバカンス」を目撃して以来の新房ファンです。偶然、自室の近所にシャフトが越してきたこともあって、絶望も化も応援しながら見ている次第です。

さて、書かれた内容については概ね同感で、新房映像の特質と云える「ギラギラ感」はシャフト以前の作品のほうが濃厚な気がします。例えば『てなもんやボイジャーズ』は、後の「ぱにぽに」「絶望」に繋がる路線だと思うのですが、絵の感触がかなり違っている。この変化は、シャフトに入ってデジタル製作に切り替えたのと、無関係ではない気がします。

あとはこちらの私観ですが、シャフト以降は新房監督の「趣味性」が結構出ているような気が。『月詠』のマルミ堂セットに代表される「久世光彦演出の水曜劇場」オマージュとか、谷岡ヤスジ等の昭和大人マンガ趣味。TVヴァラエティのひとつとしてアニメを捉える、と云う意味では、同じ年代の高松信司監督(ガンダムX、銀魂、宙のまにまに)と共通項あると思います。

それと、これは尾石さんの特質かもしれませんが、映像のカット割りにおけるリズム・カッティングの独特さ。新房作品にはミュージシャンのファンが多いようですが、リズムとしての映像、と云うのも、語られていいような気がします。
(個人的には新房~シャフト作品のカット割りは、ビートを刻んでるようで好きだったりします)

そして文中にあった「新房は物語・話作りにあんまし興味無いのでは」に関しては、既に以前、自ら肯定しております。

-- 新房さんは、ストーリーにはあまり興味ないんですか。
新房 うん、あんまりない。
(中略)
-- 要するに、お話はちゃんとしてればいいんですね。
新房 そういう事です。
-- 話がつまらないのはよくないけど、「俺はこういう話じゃなきゃ嫌だ」という事はあまりない。
新房 それはないですね。(後略)

<アニメージュ2005年2月号「この人に話を聞きたい」より。珍しい監督写真付。必読。インタビュアーは小黒祐一郎>

最後に、同じく新房ファンのミュージシャンが、想いあふれて(http://d.hatena.ne.jp/inu/20090409/1239322639)作ってしまった主題歌等のメガミックス「新房みくす」をリンクさせてください。新房愛に満ちた娯楽大作になってると思うのですが。(別の人が付けた動画付)
http://www.nicovideo.jp/watch/sm8053699
[ 2009/09/19 11:38 ] [ 編集 ]
コメントありがとうございます。
酔っ払いながらコメント書いているので、乱文お許し下さい。

「てなもんや」は「ぱにぽに」「絶望」路線の目覚めですね。
惜しむらくは「てなもんや」は全然人気無く、ぴえろの黒歴史にされてしまいました。
絵の感触については、「てなもんや」のキャラデである石浜真史の絵柄は
今のシャフトには無いからだと思います。またCG技術の変遷も要因ですね。

趣味性については同意です。実は己の趣味性をアニメで表現するのが
一番うまい人なのかもしれません。高松氏との関連させてますが
二人は同世代なので、似通う部分は出てくる可能性は高いです。

個人的にはシャフトという目線で見ると、新房より尾石達也の方が気になっています。
私もぱにぽにのOPを見て「アニメのOPの有り様」が変わると思わせたぐらい
尾石氏の演出には大変興味を持っています。
リズムに合わせたカット割りは非常に気持ちがよく、文字をビジュアルとして表現する演出
実写を差し込む演出は本当に評価すべきでしょうね。
個人的な意見を申しますと、化物語は新房作品というより尾石作品だと思っています。

ただ新房がシャフト専属以降になってからは新房の演出というよりシャフトの総意で出来た演出と
解釈してます。大沼心、尾石達也、上坪亮樹らと一緒に作り上げてきたものと思います。

私も新房の「この人に話を聞きたい」は読んでました。
それを踏まえて新房は話に興味がないと書かせて頂きました。
ただ残念なのは新房が話に興味無ければ、脚本で頼りになる人を連れてくればいいのですが
シャフト以前に良く組んでいた関島眞頼が新房との相性において
決して良くない印象を持っています。関島氏の構成は無難ですが、話が淡白な印象を受けます。
もっとドラマティックに話を組み立てていけば、新房は早く評価されていた可能性があります。

逆に「リリカルなのは」の都築真紀はドラマティックでキャラ立てをちゃんと行ったので
「なのは無印」の新房の演出が生きたと評価しています。
そういう意味で新房監督作品でいちばん好きなのは「無印なのは」だったりします。

個人的にはシャフト以前の新房についても、もっと意見が出てきてほしいです。
[ 2009/09/19 23:30 ] [ 編集 ]
新房氏のシャフト以前と以降の変容は
新房作品のメインスタッフだった
鉄羅紀明さんの死とも関係しているはずです。

旧新房メインスタッフ
関島眞頼 鉄羅紀明 渡辺明夫 石浜真史

渡辺明夫以外とは最近仕事してないような気がします。
この辺りは考察の対象になるかもです。
[ 2009/09/19 23:46 ] [ 編集 ]
コゼット見たら化物語は新房さんの進化形であるのは必然的
カメラワークにしろレイアウトにしろ
化物語でも文字演出取り込むよう尾石氏に指示したのは彼ですし
むしろ尾石氏は当初企画段階で断ったぐらいですし
[ 2011/02/24 18:28 ] [ 編集 ]
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