 | 星山博之のアニメシナリオ教室 (2007/06) 星山 博之
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土日で上記の本を読んだ。著者は星山博之氏。
80年代のサンライズ黄金期を脚本面で支えた方。
本の内容は氏のキャリアを振り返りながら、
アニメのシナリオとは具体的にどう書くのかを手解きしたものになっている。
企画書の書き方、柱、プロットの組み方、そしてシナリオ創作についての心構え。
上記の事が、わかりやすくかつ実践的に書かれている。
また氏が脚本担当した「機動戦士ガンダム」の13話「再会、母よ…」の決定稿が
掲載されているのも見所。こちらは本編映像を見比べながら読むのも面白いと思う。
本の中で印象に残った文を二つ紹介。
「アニメの感動の本質は時間の経過の積み重ね」
「映像の本質は物理的な時間の流れよりもはるかに短い時間で時の流れを人に感じさせる事」
押井守も映像は時間を演出する事だと言ってたが、
映像の本質は不可逆性な時間経過をどう見せるかにかかっている事を再認識した。
ちなみに星山博之氏が手掛けられた脚本は、
「太陽の牙ダグラム」「銀河漂流バイファム」「うる星☆やつら」
「蒼き流星レイズナー」「新世紀GPXサイバーフォーミュラ」
上記の作品群を並べるだけで(他にも多数あるが)その功績がうかがい知れる所。
氏の脚本の魅力は、物語の全容が明瞭に語られること。
キャラクターへ素直に感情移入が出来る。見る側の期待に沿った熱い展開。
それらは氏が常に普遍的な人間ドラマを志向してきたからだろう。
氏の作品・脚本は常に優しさと暖かさを持ち合わせているのは作品を見ればわかる。
本書の中で富野監督はシャアやセイラが好きであり
対照的に星山氏はカイに興味があったと記述がある。
こういう「1stガンダム」では富野監督と星山氏のモノの見方の違いが
文芸面での相乗効果を発揮させたのではと思う。
これが作品のバランスの良さに繋がっていると思うし、
ガンダムの中でも「istガンダム」がアニメファン以外の多くの方にも
共感を得られているのも氏の脚本だからという指摘がよくされているが、的を得ていると思う。
個人的に好きな脚本家は榎戸洋司氏だったりするが、
理想的な脚本を書かれる方は星山博之氏というイメージを持っている。
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この本を読んで特に感動するのは、星山氏が「再会、母よ…」のシナリオを全編載せたことです。もちろん全体のあらすじは星山氏が仕立てたものだったのですが、実際の完成フィルムと比べれば、細かいニュアンスはほぼ富野監督が味付けたものだと分ることができます。安彦さんもこの話を絶賛してなりませんが、実はかなりの部分が富野監督の手によるものだったかもしれません。
にも関わらず、シナリオ稿を全部掲載する星山氏の度胸と器量の大きさに、私は思わず感動しました。